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エリスリトールエリスリトールと高甘味度甘味料の併用による応用技術

高甘味度甘味料の課題

図1 甘味特性

低カロリー、ノンカロリー飲料には、従来から高甘味度甘味料(アスパルテーム、ステビア等:以降 HISと略)が用いられており、1999年には新規 HISとしてスクラロースが認可されました。また欧米で広く用いられているアセスルファムKも 2000年4月に認可され、処方設計上の HIS選択肢が拡大しつつあります。しかしながら、 HISの甘味特性には先味の立ち上がりが遅く、後味が長引く等の傾向があり処方設計上の課題となります。しかし、エリスリトールを併用すると、よりショ糖に近い良好な甘味質に改質することができます。図1に時間強度法による甘味特性を示します1~3)

各種 HISに対するエリスリトールの併用効果についての種々の評価結果を紹介します4)。(評価パネル:官能評価に熟練した10名)

参考文献

1)豊田邦栄:ビバリッジジャパン、215(11)、81-83(1999)
2)早川幸夫編:糖アルコール新知識、72-85(1996)、食品化学新聞社
3)特許公告 07-100013
4)英国調査機関 Lintech社による研究(1999、2000)、未発表

アスパルテーム、アセスルファムK入り飲料へのエリスリトール併用効果

アスパルテームあるいはアセスルファムKを含むクエン酸水溶液に対して、エリスリトールを添加して甘味特性の変化を比較したところ、甘味はより良質なものに改善されることが確認されました。 また、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、マルチトールを添加して甘味特性の変化を比較しました。なお、これらの糖アルコール添加により甘味度が変化するため、 HISの使用量を調整して、甘味度を同等に揃えています。表1に結果を示します。いずれの糖アルコールに関しても、少量の添加で甘味特性が変化することが確認されましたが、エリスリトールの添加により得られる甘味特性が最も好ましいと評価されました。

さらに、これらの HISを含むコーラ炭酸飲料またはレモンライム炭酸飲料に対してエリスリト-ルを併用したときの甘さと風味の評価結果を表2、3に示します。エリスリトールの併用により甘さの立ち上がりが早まり、切れ味が改善され、フレーバーが好ましく発現し、添加量の最適値が存在することが示唆されました。 HIS使用によりフレーバーの発現が悪化する場合があると言われていますが、適切な量のエリスリトールの添加により、これを改善できる可能性が示されました。

表1 アスパルテーム、アセスルファムK入りクエン酸系水溶液へのエリスリトール併用効果

  糖アルコール アスパルテーム アセスルファムK 評価
a 525ppm 甘さの立ち上がりが遅く、甘さ・金属味・苦味が後を引く。口当たりは薄い。
b エリスリトール 0.25% 525ppm 甘さの立ち上がりがやや早まり、後味に金属味がわずかに残るが aより好ましい。丸みのある口当たり。
c エリスリトール 1.00% 485ppm 甘さの立ち上がりが充分早まり、後味の切れがよくなる。 bよりやや水っぽい口当たり。
d 350ppm 甘さの立ち上がりは早いが、不快な苦味が後を引く。口当たりは薄い。
e エリスリトール 0.25% 350ppm 苦味の後引きが弱まり、口当たりが豊かになる。
f エリスリトール 1.00% 310ppm 苦味の後引きがほとんど消え、良質な甘味となる。
g 160ppm 160ppm 口当たりが薄く、ざらつき・苦み・甘さが後を引く。
h エリスリトール 1.00% 141ppm 141ppm gよりも口当たりが豊かで、後味に切れがある。
i キシリトール 1.00% 139ppm 139ppm gよりも口当たりが豊かだが hには及ばず、やや金属的な味を呈す。
j ソルビトール 1.00% 143ppm 143ppm g、iよりも金属味は少ないが、 hよりも苦く、後味の切れが悪い。
k エリスリトール 1.00% 140ppm 140ppm h、i、jよりも苦く、金属味を呈す。

処方:
クエン酸 0.14%、クエン酸ナトリウム 0.01%、甘味料、残分水。

表2 アスパルテーム、アセスルファムK入りコーラ炭酸飲料へのエリスリトール併用効果

  エリスリトール アスパルテーム アセスルファムK 評価
a 0% 525ppm 甘さの立ち上がりが遅く、苦みが後を引きざらつく。
b 0.2% 505ppm aよりも丸みを帯びた切れのよい甘味を呈す。コーラ風味に深みがあり、口当たりが非常に豊かで好ましい。
c 0.5% 478ppm aよりも甘味の立ち上がりが早く、ショ糖様の甘味を呈するが、bよりもバランスが悪く、後味はやや苦い。
d 1.0% 458ppm aよりも甘さの立ち上がりが早いが、bよりもやや水っぽく、後味が金属的。
e 0% 360ppm 90ppm 甘さの立ち上がりが遅く、甘味と苦みが後を引く。
f 0.2% 342ppm 86ppm eよりも口当たりとコーラ風味が豊かで、甘味と苦みは長引かない。
g 0.5% 326ppm 82ppm eよりも甘さの立ち上がりが早くショ糖様の甘味を呈し、コーラ風味が豊か。後味の切れが非常によい。
h 1.0% 316ppm 79ppm eよりも甘さの立ち上がりが早くショ糖様の甘味を呈するが、gよりもやや水っぽい。

処方:
Calleva Flavorings Ltd. 製コーラフレーバー AO1161:0.17%、BO11G1:0.17%、リン酸 0.085%、
クエン酸ナトリウム 0.031%、クエン酸 0.018%、安息香酸ナトリウム 0.018%、甘味料、残分炭酸水。

表3 アスパルテーム、アセスルファムK入りレモンライム炭酸飲料へのエリスリトール併用効果

  エリスリトール アスパルテーム アセスルファムK 評価
a 0% 450ppm 甘さの立ち上がりが遅く、甘味と苦みが非常に長引く。フルーティさに欠ける。
b 0.2% 435ppm aよりも丸みを帯びた切れのよい爽快な甘味を呈す。フルーティでフレッシュなレモン風味を呈す。口当たりは豊か。
c 0.5% 425ppm aよりも甘味の立ち上がりが早くショ糖様の甘味を呈するが、bよりも爽快さに欠け、後味はやや苦い。口当たりは豊か。
d 1.0% 415ppm aよりも甘さの立ち上がりが早いが、bよりもやや風味バランスが劣る。口当たりは豊か。
e 0% 160ppm 160ppm 水っぽく酸味があり、苦みが後を引く。
f 0.2% 150ppm 150ppm eよりもフルーティでフレッシュなレモン風味を呈す。
g 0.5% 142ppm 142ppm eよりも甘さの立ち上がりが早くショ糖様の甘味を呈すが、fより風味は劣る。後味はやや苦い。
h 1.0% 140ppm 140ppm eよりも甘さの立ち上がりが早くショ糖様の甘味を呈するが、fよりもやや水っぽい。後味が強く出る。

処方:
Synergy Flavors. Ltd 製レモンライムフレーバー 5SX-70978 0.085%
クエン酸ナトリウム 0.031%、クエン酸 0.310%、安息香酸ナトリウム 0.018%、甘味料、残分炭酸水。

ステビア入り飲料へのエリスリトール併用効果

ステビアを含む紅茶飲料またはコーヒー飲料に対してエリスリトールを併用した際の評価結果を表 4、5に示す。併用により甘さの立ち上がりと切れ、および口当たりが改善され、フレーバーが好ましく発現した。

表4 ステビア入りレモンティへのエリスリトール併用効果

  エリスリトール ステビア 評価
a 0% 90ppm 甘さの立ち上がりが遅く、甘くドライな後味が残る。口当たりが薄い。
b 1% 60ppm 甘さの立ち上がりが早く、後味の切れがよく、口当たりと甘さが豊か。レモン風味が高い。
c 3% 25ppm 甘さの立ち上がりが早く、後味の切れがよい。レモン風味が高いが紅茶風味が弱まる。

処方:
Haarman & Reimer 製紅茶エキス 0.4%、Synergy Flaovors Ltd. 製紅茶フレーバー 0.15%、甘味料、残分水。

表5 ステビア入りコーヒーへのエリスリトール併用効果

  エリスリトール ステビア 評価
a 0% 90ppm 甘さの立ち上がりが遅く、苦くドライな後味が残る。口当たりは薄く水っぽい。
b 1% 63ppm 甘さの立ち上がりがやや早まり丸みのあるプロファイルとなる。後味はややドライ。口当たりは豊かでミルキーになる。
c 3% 20ppm 甘さの立ち上がりが素早く、後味の切れがよい。口当たりは豊かで温かく、クリーミーになる。

処方:
コーヒー粉 0.80%、Synergy Flavors Ltd. 製コーヒーフレーバー 5AX-71772 0.10%、脱脂粉乳 3.7%、
甘味料、残分水、90℃ 5分殺菌。

各種飲料におけるエリスリトールの使用

以上の結果から、エリスリトールが HISの持つ甘味特性をより向上させ、カロリーを上げることなく飲料の味を向上することが確認されました。このとき併用すべきエリスリトールの最適配合量は、飲料の種類やフレーバー、組み合わせる HISによって異なることが確認されました。また、HISのみならず、砂糖や果糖と併用すると、その味質をさらに向上させた上で、カロリー低減に寄与できます。さらに、砂糖、果糖、HISとエリスリトールとを組み合わせることにより、低コスト、低カロリーでかつ味質の優れたな甘味料システムを得ることも可能です。このような各種の飲料や食品がすでに上市されており、現代の低カロリー指向に対する、優れた解決策として広く用いられています。

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